今回は誤嚥について考えてみたいと思います。
誤嚥というと高齢の方や疾病後の嚥下困難がある方に限った話と思われるかもしれませんが、その認識は改めた方が良いかもしれません。
40・50代でも「最近食事中にむせやすくなった」「以前よりも声がかすれ気味だ」という心当たりがある方、すでに誤嚥は始まっています。
誤嚥について知るにあたり、嚥下時の喉頭(こうとう)を見てみましょう。
喉頭とはどこを指す言葉でしょうか。
喉(のど)の部位で一般に私たちが「のどぼとけ」と呼んでいるのは軟骨です。甲状軟骨と言い、男性では外側前方に隆起してはっきりと見えます。目立ちませんが女性にも存在しているもので、この位置を喉頭と呼びます。喉頭の内側には左右一対の声帯が存在し、呼吸・発声・嚥下のタイミングに合わせて開いたり閉じたりしています。声帯は気管の入り口で、呼吸のときには大きく開きます。発声のときには閉じて振動します。嚥下のときにはピッタリと閉じています。
声帯(気管)と食道の境目には喉頭蓋という可動性の軟骨があり、食道を開き気管に蓋をすることで誤嚥を防いでいます。喉頭蓋を動かす筋肉が動くとき、筋肉につながっている甲状軟骨(のどぼとけ)が上にグッと持ち上がる構造になっているので、ちゃんと嚥下しているかどうかを外から確認することができます。
疾病や加齢の影響により、上記のような仕組みは衰えていきます。喉頭の位置は加齢に伴い低くなるので、適切な位置に持ち上がるまでに時間がかかるようになります。嚥下のスピードが遅くなり、食物の流入に追いつかなくなります。また声帯が委縮しピッタリと閉鎖しなくなり、隙間があるので誤嚥しやすくなります。声帯が閉じないと咳払いでの踏ん張りも弱いので、誤嚥したものを吐き出すのが難しくなります。
このような機能の衰えは防ぐことができます。前述のように正常な嚥下には喉頭蓋と声帯がしっかりしている必要がありますので、喉頭を鍛えましょう。とは言え、喉のみ鍛えるのは難しいので、口(頬、唇、舌)から喉を一体と捉えトレーニングを行いましょう。代表的なお口の体操として「あいうべ体操」「パタカラ体操」が挙げられます。もっと負荷の大きいトレーニングをしたいならペットボトルや吹き戻しでの呼吸訓練も効果的です。
最後に、筋トレにタンパク質は必須です。しっかり栄養摂取もお忘れなくお願いします。
新潟市歯科医師会 学術・医療管理部会 重谷寧子