歯科治療に来られた患者さんに「口の中が乾いて困る」と言われることは少なくありません。口の中が乾燥する状態を「口腔乾燥症」や「ドライマウス」と言います。実際にお口の中を見ると唾液の量は様々ですが、深刻な悩みとなり、日常生活に支障をきたす場合もあります。
唾液は、平均一日に1~1.5リットルの量が分泌され、口の中の環境を整える重要な役割を担っています。むし歯や歯周病、口臭を防いでくれますし、口腔内の粘膜が乾くと、ヒリヒリと痛んだり、カビが繁殖することもあります。食べて飲み込む際にも、噛んで細かくなった食物を飲みやすくまとめたり、消化液としても作用します。
勿論、摂取する水分量が相対的に少なければ口は乾きますが、加齢とともに唾液を分泌する機能が低下して口が乾くことがあります。服用している薬の副作用や精神的ストレス、呼吸のしかた(口呼吸)や就寝時の開口、エアコンの影響も原因の可能性があります。また、糖尿病など、口が乾きやすい疾患もあります。
対処としては、まず原因となり得るものを少なくできるか考えますが、内服薬の変更などは簡単にできないことが多く、対症的な治療が多くなります。具体的には口腔保湿ジェルの使用や頻回な口ゆすぎ、唾液腺マッサージや顎や舌の運動指導などです。生活習慣や気持ちの持ち方も重要です。水分摂取は大切ですが、口が乾くからとむやみに水分を多く摂ると、身体に悪影響をきたす方もいらっしゃいますので注意してください。
唾液が少なくなると口腔内のトラブルが多くなりますので、口が乾く方は歯科専門職に相談されることをお勧めします。
新潟市歯科医師会 口腔保健福祉センター部 道見 登