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管楽器奏者も「歯が命」! (2018年9月)

2020年9月25日

「芸能人は歯が命」、「アスリートは歯が命」そんな表現を耳にしたことがある方も少なくないかと思います。あまり関係ないように思われるかもしれませんが、吹奏楽で演奏する大部分の楽器、管楽器奏者にとっても「歯が命」なんです。

 

私自身は和楽器の篠笛(竹製の横笛、フルートと同じ仕組みで音を出します)を演奏するのですが、プロの篠笛奏者の方とお話しした際に、歯科治療に対する不安を聞きました。名人と言われるほどの奏者が前歯を治療しただけで全く演奏が変わってしまった、言い方は悪いですが下手になってしまったというお話でした。歯の大切さは自覚しているが、どこの歯科医院へ行っていいのかがわからない、ということでした。

 

歯の治療で影響を受けてしまうのは管楽器ほとんどと言っていいです(リコーダーのように誰でも簡単に音を出せるものはあまり影響ないと思います)。サックス、クラリネット、オーボエ、トランペット、フルートなどのリード楽器(マウスピース分類ではシングルリード、ダブルリード、リップリード、エアリードの全て)ほとんどで歯科治療が影響する可能性があります。なぜ影響が出てしまうのかというと、管楽器を演奏するために歯や唇を楽器の支えとして使用したり音を発生させるために使用するからです。歯の形や傾きが変わると、その上に乗っている唇の張り出し具合や緊張も変わってしまいます。ただし影響、変化があったとしてもそれに順応できるのであれば演奏は問題ありませんが、それまでに習得してきた口元の感覚で演奏できなくなる可能性があるということです。

 

では、管楽器奏者は歯科治療を受けないほうがいいのか?というとそういう訳ではありません。重要なことは、お口の状態を大きく変化させないことが大切ということです。身近な歯科医院で構わないので、虫歯予防のための指導を受けること、定期的な虫歯のチェックや歯周病の予防処置を受けることはとても大切です。もし虫歯ができてしまい治療が必要になった際には、自分が管楽器を演奏している旨をしっかり伝え、可能であれば以前と同じような形態で仕上げてもらえば大きな問題も生じないでしょう。もともと乱れた歯並びで長年演奏してきたような方であれば、治す際にも前と同じような歯並びや形態になるように強く歯科医へ伝えておかないと、一般的な形に修正され仕上がってしまい、口の周りの筋肉の具合も場合によっては変化してしまうかも知れません。

 

矯正治療は、その特徴としては大きく歯を動かすこと、矯正装置を装着する期間があることがあげられます。何十年も演奏してきたような経験者の場合は矯正前後で口周りの状態が全く変わってしまう可能性もあり、以前と同じ感覚で演奏することは難しいかもしれません。子供の頃の矯正の場合は歯並びも変化する時期ではあるので、口周りの状態の変化にもそれなりに順応していけるかと思います。矯正装置を付けている期間は、楽器によっては唇が装置に押し付けられて痛みが生じたり唇を傷つけてしまうこともありますが、絶対演奏できないというわけではないので矯正の先生にご相談されると良いと思います。

 

楽器の演奏にはとにかく練習が大事だということは分かり切ったことですが、最良の演奏を長時間続けることや、年をとってからも演奏を楽しみ続けていくためには、演奏時の良い姿勢を身につけることや体力づくりなどが重要になります。管楽器の場合、そのような身体のメンテナンスに加えて、「お口・歯のメンテナンス」も重要な位置づけになるのではないでしょうか。 

(よしだファミリー歯科 吉田孝史)

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