「格差社会」とよく言われることがあります。この言葉は1980年代後半から使われ始めたようですが、ウイキペディアによると“収入や財産によって人間社会の構成員に階層化が生じ、その階層間の遷移が困難になっている社会”を意味するそうです。
健康にも格差は生じていて「健康格差」と呼ばれています。2016年にNHKスペシャルにも放送されましたので、ご覧になった方もいらっしゃるかもしれません。同じように、歯科疾患においても健康格差は生じます。例えば虫歯に関しては、12歳児の一人平均虫歯数を比較すると新潟県は全国で一番虫歯の本数が少ない県です。県によって格差があります。
同様に、県内でも地域差があります。新潟市は県内では真ん中くらいでしょうか。
12歳児一人平均虫歯数(市町村別)
(令和3年度歯科疾患の現状と歯科保健対策より)
では新潟市内ではどうでしょうか?次の図をご覧ください。
12歳児一人平均虫歯数(新潟市区別)
やはり同じように地域格差があるんです。これは虫歯だけではなく、歯周病やお口の清掃状況でも同様のことが言えると思います。
虫歯や歯周病の格差はどうしてできるのでしょうか。細菌(生物学的要因といいます)やブラッシングの仕方(生活習慣・行動要因といいます)が悪いという個人的な原因だけなのでしょうか?今ではこういう原因だけではなく、地域や経済状態などの社会環境(健康の社会的決定要因といいます)の差により健康格差が生まれるといわれています。また最近では、個人の社会的決定要因のみならず、集団や地域規模のさまざまな要因の健康への影響が明らかとなってきています。
ではそういう考え方を踏まえた歯科的な健康政策にはどのようなものがあるのでしょうか。
図の上の方ほど健康格差の縮小に効果がある対策といわれています。新潟市では、新潟市歯科口腔保健推進条例が制定されていますし新潟市生涯歯科保健計画も策定されています。また、市行政から多くの財政支援をいただいて、新潟市歯科医師会では各種の歯科保健施策に対する協力をしています。まだまだ足りない部分はありますが、市民として活用できる施策は多くありますのでぜひ活用していただいて、お口の健康格差をなくしていきましょう。
新潟市歯科医師会 会長 荒井節男