2024年5月にキリンホールディングス(キリン)から、食器型デバイス「エレキソルトスプーン」が新発売されました(税込:19,800円)。使用すると電気の力で減塩食品の塩味やうま味を増強する効果があり、明治大学との共同研究で5年以上の歳月をかけて開発された商品です。
20歳以上の日本人は1日あたりに摂取する食塩量が10.1gであり、WHO(世界保健機関)が推奨する食塩摂取量5.0gと比べて非常に多いことが分かっています。厚生労働省は、「食塩の過剰摂取」を日本人の栄養に関する最重要課題としています。減塩食を行っている方の多くが、味に対する不満を持っていることが分かっています。キリンの調査によると、薄味でなく濃い味で食べたいものの1位がラーメン、2位が味噌汁という結果だそうです。確かにラーメンはあらゆる世代で人気があり、味噌汁は日常食として日本人に定着しています。キリンでは当初、箸やお椀といった食器でも開発していたそうですが、スプーンであれば高い食事のニーズにも対応でき、外国人にも使用が可能と思われます。
現在、ヒトの味覚には5つの基本味があるとされていて、塩味のほかに甘味、酸味、苦味、うま味があります。塩味は主に食塩(塩化ナトリウム)により生じ、低濃度では嗜好的に働きますが、高濃度(例えば海水)などでは敬遠されます。一方、トウガラシの辛み成分であるカプサイシンなどにより生じる「辛味」は、味覚というより痛覚や温覚に近いとされています。味覚閾値(味覚が生じる最低濃度)は塩味や甘味では閾値は高いのに対し、酸味や苦味は低く、また大きな個人差があり100倍以上も異なることが知られています。
歯周病を悪化させるリスクとして糖尿病が知られています。塩分の過剰摂取による高血圧症が糖尿病と合併すると、糖尿病性腎症や網膜症、動脈硬化による脳梗塞や心筋梗塞などの重大な合併症を進行させることになります。減塩による高血圧症予防は糖尿病の合併症のリスクを減らすだけでなく、歯周病のリスクも減らすことが期待されます。
詳しい情報を知りたい方は、キリンのホームページ内の以下のサイトをご参照ください。↓↓↓
新潟市歯科医師会 総務部 田井 秀明