唾液腺とは唾液(つば)を作る組織(工場)のことで、大唾液腺(大きな唾液腺)小唾液腺(小さな唾液腺)があります。大唾液腺は耳下腺、顎下腺、舌下腺の3つからなり、これらで作られた唾液は管を通してお口の中に導かれます。一方、小唾液腺はお口の中やのどの粘膜にたくさん存在しています。これらの唾液腺組織を作る細胞から腫瘍が発生することがあります。
唾液腺腫瘍の約 85%が耳下腺に生じますが、その過半数は多形腺腫(たけいせんしゅ)という良性の腫瘍です。顎下腺、舌下腺、お口の中の小唾液腺原発腫瘍の頻度は少ないですが、顎下腺は約半数、舌下腺はほとんどが悪性といわれています。お口の中の小唾液腺原発の悪性腫瘍は、臨床的には良性腫瘍の態度を示すことがあるので、診断や治療に慎重な対応が必要となります。
日常的によくみられる粘液嚢胞(ねんえきのうほう)は主に小唾液腺の管が傷ついて、唾液の排泄障害が起こり、お口の粘膜が腫れてくる病変です。自然に消失することがありますが、再発を繰り返すことが少なくありません。粘液嚢胞は嚢胞状(袋状の)病変であり、腫瘍ではありません。
これらの鑑別は難しい場合がありますので、お口の粘膜、顔や首の腫れがある場合は歯科・歯科口腔外科もしくは耳鼻咽喉科等の専門医療機関を早めに受診しましょう。
【参考文献】
Miyamoto S, et al: Br J Oral Maxillofac Surg. 2017 Sep; 55(7): 727–729.
新潟市歯科医師会 口腔保健福祉センター部
宮本重樹