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お口の自己免疫性水疱症について

2022年9月25日

お口の中の粘膜(口腔粘膜)にはさまざまな原因で口内炎が生じます。日常的によく見かけるのは、体調が悪い時にできやすいアフタ性口内炎、入れ歯や歯のとがりがあたってできる褥瘡性潰瘍などがあります。これらは皆さんも時々経験されていると思います。

ひとくちに口内炎と言っても、その原因や症状は非常に多種多様です。そして、全身疾患や皮膚疾患に伴う症状の一つとして、口内炎ができることがあります。特に、皮膚疾患に伴って難治性口内炎を発症する代表的なものに「自己免疫性水疱症」という病気があります。

これは、自分の皮膚の表皮、あるいは粘膜の上皮にある成分を攻撃する抗体が体内で作られてしまい、その結果、細胞がバラバラに離れて皮膚や粘膜に水疱を生じる病気です。尋常性天疱瘡、*粘膜類天疱瘡などの種類があり、いずれもお口の中に初発することが多い水疱症(水ぶくれ)です。口腔粘膜に生じる水疱はすぐに破れることが多く、難治性の広い範囲でびらんとなります。治りにくい大きな口内炎が繰り返し出現する場合は注意が必要です。

なお、最近話題の「サル痘」も水疱ができますが、サル痘と違って「自己免疫性水疱症」は感染症ではないので、人から人にうつる病気ではありません。

診断は臨床症状、組織生検、血清学的検査を合わせて行います。治療はステロイドが中心となっていますが、治療の効果がない場合は、免疫抑制剤投与、大量免疫グロブリン静注療法や血漿交換療法などの大がかりな治療が併用されることがあります。

治りにくい口内炎は放置せず、早めに歯科医院などの医療機関を受診しましょう。

【参考文献】

Miyamoto S, et al: Br J Dermatol. 2014; 171(6): 1555-1557

 

新潟市口腔保健福祉センター部員 宮本重樹

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