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飲み物のpHについて

2023年9月25日

本稿のブログへの掲載は9月下旬とのことですが、秋らしい空気になっているでしょうか。まだまだ涼しくなる気配が微塵も感じられない残暑厳しいなか執筆することになり,こんな話題で勘弁してください。この夏を振り返りますと,全国の最高気温に関するニュースでは,ほとんど毎日新潟市がトップ10入りしておりました。熱中症対策には水分補給が大事となるわけですが,水やお茶以外を多飲した方はいらっしゃいませんか。

甘い飲み物がむし歯になるリスクを高めることは,誰もが知っていることと思います。むし歯の原因菌が糖を代謝して酸を作り出し,その酸が歯を溶かします。しかし本稿では飲み物の甘さではなく,「pH」について注目していただきたいと思います。pHとは水溶液の酸性とアルカリ性の度合をあらわす指数です。pH7.0が中性であり,数字が7より大きければアルカリ性をあらわし,7より小さければ小さいほど酸性度が強いことになります。

それでは,飲み物のpHについて見ていきましょう。水がpH7.0で,唯一中性の飲み物になります。無糖のお茶は中性ではなく,製品にもよりますが大体pH6.5前後になります。無糖の炭酸水でpH4.5,オレンジジュースでpH4.0,スポーツドリンクでpH3.5,甘い炭酸飲料でpH2〜3.5になります。ちなみに,レモンはpH2.3,お酢はpH2.8というデータがあるので,炭酸飲料はレモンやお酢と同レベルといえます。

ここで気をつけていただきたい点は,エナメル質の臨界pHが5.5であるということです。エナメル質とは歯の外層をなす硬い組織ですが,このエナメル質はpH5.5で溶け始めるのです。したがいまして,上記のpH5.5以下の飲み物には直接歯を溶かす作用があるということになるのです。

ところで,歯は溶ける(脱灰)ばかりでなく,修復(再石灰化)されます。歯が酸性の環境にさらされても,だ液が酸を中和して洗い流したり,再石灰化(溶け出したカルシウムやリンを歯の表面に戻す)を行ってくれますので,脱灰と再石灰化のバランスがとれていれば,そう心配することはありません。しかし再石灰化が追いつかないほど脱灰が続けば,それはもうむし歯への道を突き進むことになるのです。

 

頻繁に歯の脱灰を繰り返さないために,水分補給はまず水かお茶で。それ以外はほどほどに。

 

 

新潟市歯科医師会 口腔保健福祉センター部 馬場宏俊

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