高齢者や有病者が介護する側にまわることが珍しくない現代では、かつては立派で模範的な生き方と考えられてきた自己犠牲は、周囲を巻き込む重大な問題を引き起こすこともあります。
家族の介護中に骨折して手術後、再骨折リスクを減らす薬物療法や環境整備などの取り組みを行なったが家族の介護という生き甲斐を奪う結果になった例。両親の介護により心身の破綻を来たし始めていたため、父親のショートステイと母親の短期入院でレスパイトケアを行なったが状況は好転しなかった例。配偶者と子を同じ疾病で看取るまで長期間不休で介護と仕事を続けたが、自身が脊椎骨折の患者になったときには治療を望まなかった例。本間先生によれば「自虐的世話役」という概念は、これら三例の行動様式と問題点を理解するうえで有用だったとのことでした。
そこで今回は本間先生が行なわれた退院支援を提示していただき、対人援助難渋例に対する理解と対応についての考察を加えていただきます。